抵抗

 出張先の都内の新幹線駅のコンコースで、若い女性が倒れているのに遭遇した。
 その脇には母親ぐらいの年配の女性が倒れている若い女性を起こそうとしていて、サラリーマンらしき男性がかがんで「だいじょうぶですか?」と助けようとしている。
 その女性は目を閉じて いかにも「何かがあって」倒れたような格好だったが顔色、血色もよくて不思議な感じがした。年配の女性は必死で彼女を起こそうとしているが、彼女は目を閉じたまま身体を脱力させて起きられない。
 と、そこに駅員が一人かけつけてきて、彼女と年配の女性に向かって「だいじょうですか?」とかなり大きな声で叫んだ。
 年配の女性がその声に呼応して「ほら乗り遅れるから。。。」と言ってまた身体をおこそうとする。
 すると彼女は目を閉じたまま上半身だけ起き上がった。
 彼女が倒れているのを確認してから この間10秒ほど。
 近づいていって、ちょうど一番近くに寄ったところで彼女が起き上がったので 駅員も来ていたし、私はそのまま素通りして立ち去ることにした。
 その数秒後、背後で彼女の搾り出すような声が聞こえた。
 「行きたくない。。。」
 そして、大きな泣き声がコンコースに響き渡った。
 皆が一斉に振り返る。 泣き声は続く。 嗚咽ではなく号泣だ。 私は振り返らず背中で少しずつ遠ざかる泣き声を聞き続けた。
 そして、「親の転勤でド田舎に引っ越すことになった都会育ちの彼女が駄々をこねているのだ」というストーリを勝手に作って自分を納得させた。それ以外の理由は考えたくなかった。
 そんなワガママナ理由であって欲しい師走の出来事。
 心にザワザワした何かが沸騰し、しばらくして沈殿した。

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