<<2021/3/29追記>>
リーマンショックの真っただ中の時に書いた記事です
<<追記終わり>>
2009年1月22日の業績修正企業
当初計画売上高と今回発表売上高の変化率が だいたい10%~20%下がっています。この状態でほとんどの企業が赤字に転落しています。しかも赤字幅がかなり大きい。
これをどう読むかですが、重要なのは製造業に関しては一部を除いて昨年(2008)の10月まではほぼ計画通りに受注できていたということです。
例えば、製品の受注から出荷までのリードタイムが3ケ月だとすると、10月までは普通に受注できていた訳ですから今年の1月までの生産枠は計画通りにあったということになります。
ということは、残りの2月と3月の2ケ月で全体の10%分が落ちてしまったというわけ。 当初計画の売り上げが120億円で修正値が108億円(△10%)だった場合、当初計画では毎月10億の売り上げですが、2ケ月間で12億落ち込むということは、2月と3月の2ケ月間は生産が40%にまで落ち込んでしまったということです。
見かけの10%減にだまされてはいけません。
しかも、11月以降、受注状況は更に悪くなっているのです。
2008年度は、途中まで好景気だったからこの程度の赤字(それにしても巨額ですが)で済んでいますが、今の受注レベル(2008計画の2?3割)がこのまましばらく続くとしたら2009年度は本当に異常事態となってしまいます。
一兆円を超える損失を出す所謂優良企業もでてくるのではないでしょうか。 まぁ損失が出せる企業は幸せで、その前に「資金がショートして破綻」というリスクがかなり高くなってくるでしょう。
今この時期、3月末決算を採用している企業の第3四半期決算(10-12月)が出るタイミングです。当然、第4四半期(1-3月)の数値予測もしていますので、今から2週間ぐらいで赤字転落の業績修正が山のように出てくると思います。
今後1年間は、「赤字か黒字」かではなく、「資金があるかないか」という視点で企業を見ていかないといけません。
ここ数年、各社ともに設備投資を物凄い勢いで行っていて、そのための資金をCPや社債や借金で賄っていました。
その償還期限や借金の支払い期限が来たときにそれだけの「現金」がないと破綻です。
設備投資を計画したときは売上げが順調に伸びてモノを売って入ってくるお金があるという前提で借金しているわけで、肝心の売上げが減ってしまったので借金を返す現金がないのです。(しかも半端無いレベルで)
現金が手許に無い状態で借金を返す通常の選択肢としては、
1. 銀行から短期で借りる
2. 増資をする(第三者割り当て)
3. 新たに社債やCPを発行して市場から調達する
があげられますが、
1.については、銀行は「貸し渋り」「貸しはがし」とか言われていますが、要は株価が下がって銀行が所有している株の評価額が下がり、これ以上新規に貸し出せなくなってしまっているのでそう簡単には貸してもらえません。
2.増資をしようとしても誰も引き受けてくれません。
? はCPを引き受けてくれる人は誰もいません。
国がCPを買い上げることを決定したそうですが、それは、償還が来たCPの返済をCPを再発行してとりあえず生き延びるためにどうしても必要だからです。
いまどき、CPを買ってくれる人は誰もいませんので国が買い上げるしかないということ。 それをしないと企業破綻ラッシュとなってしまうので国が動いたということです。 しかし、国はどれだけのCPを引き受けるつもりでしょうか。。。。
企業の資金繰りはこのように大変厳しい現状ですが、これから更にその厳しさは増していきます。
まず、
・受注が無いので売上げがその分落ちる= 受け取る現金が激減する。更に、今まさに出荷しようとしている商品が客先からキャンセルされたり、キャンセルならまだキャンセル料を払ってもらえるのでまだマシですが、単純に「納期を延ばす」ことが横行するでしょう。 そうなると、商品は出荷しないわけですから受注残として残っていたものが棚卸資産 のまま現金化できなくなります。 これが連鎖反応的に全世界で発生するのではないでしょうか。
・受注がたくさんあった頃に物を作るために購入した素材や部品などの支払い期限がくる。その金額は今の売上げ高よりも大きいかもしれません。
そして、もっとも重大なことは 人が余るということです。 世間でここ1ケ月間派遣切りで盛り上がっていましたが、生産量が1/3以下になるということは、派遣者と契約更新しないぐらいではとても間に合わないことなのです。 人を雇っているということは、仕事があってもなくても給料を支払うということであり、毎月かならず莫大な現金が必要になってきます。 これが先ほど述べた
現金が足りない状況とあいまって企業の経営者は重大な決断を迫られるでしょう。 最近のニュースで、三井金属が10%の正社員削減などが出てくるようになりましたが、これはまだ序の口で、これから一年間は様々な形で人員整理が行われていくはずです。
人員整理はいくつか段階があって、
第一段階
とりあえず当面の仕事量減少に頑張って耐える
1. 派遣の契約打ち切り、期間社員の契約延長なし
2. 正社員の残業ゼロ化
3. 管理職の給与カット、役員報酬のカット
4. 2直勤務取りやめ
第二段階
もう少し大胆な施策が必要となる。この段階ではまだ、景気が回復したときのために人材を温存する対策となる。
1. 一時帰休(通常は85%の給与が支払われる)
2. 操業カレンダーの変更(週休3日など出勤日を減らす)
3. 正社員の賃金カット(10%以下)
4. 管理職の希望退職制度
5. 好況業種への応援派遣(これは今回は無理っぽい)
第三段階
完全に人余りが顕在化。 当分回復の見込みなしと判断して思い切った削減策を実行する。 所謂リストラクチャリング。この段階で力尽きて実際に倒産する企業も出てくるだろう。また給料が遅配される企業も出てくる。
1. 部門・工場単位での閉鎖。これによる希望退職制度。遠隔地への転勤等での自己都合退職誘発。
2. 賃金の大幅カット(3割とか半分とか)。
3. 管理職の指名解雇。
第四段階
ここまでくると実質破綻している。
1. 部門毎あるいは会社毎身売りして新しい経営者が容赦なく賃金カットや首切りを行う。
現在、多くの大企業では 第一段階から第二段階に移ったところだと思います。 昨日発表されたSONYの工場閉鎖等第三段階の施策を発表する企業も出てきました。 大企業でこれですから、中小企業は今まさに生き残りをかけて戦っている真っ最中だと思います。
経済活動は取引の連鎖です。 その連鎖が逆周りをはじめたら、一見関係のなさそうな業種をも巻き込んであっと言う間に破綻してしまいます。 今、世界経済はその危機に直面していて日本もまた例外ではありません。 上に書いたことが日本中で起きているはずです。
このような状況下では、国家による対策しかありません。 政治家、官僚は事の重大性をもっとよく認識しないと誤った方向に進むだけのような気がします。 まぁ政治には期待できません。。。
となれば、われわれ一般人はどうすればよいのでしょうか。 答えは「何もできません」です。 どんなことが起きようとも泰然自若でいられるように胆力を鍛えることですかねぇ。。。
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