京都に関する書籍
著者: 西口克己
出版社: 中央公論社
形態: 小説
初版:昭和36年3月30日

祇園祭 西口克己/中央公論社
この小説は、応仁の乱の後の天文2年に祇園祭の山鉾巡行を復活させた京都の町衆の物語です。
[ストーリ]
当時、京都の街は応仁の乱とそれに続く土一揆などで荒れ果てており、町は幕府の侍が守っていたのですが頼りなく土一揆の反乱軍に焼き討ちに何度もあうなど疲弊していました。
そこで町衆の若手を中心に町は自分たちで守るというコンセプトで自ら武装し、何度も焼き討ちにあっている近江の農民を逆に攻めたり、馬借という荒くれ者たちとも戦って力をつけますが、結局自分たちの敵は彼らではなく幕府であると気づき、幕府との関係を少しずつ薄めて行くことにし、税金を不払いするなど抵抗を始めました。
そんな状況の中で、町民が幕府からも延暦寺からも支配されない新しい町の運営を目指して人心を一つにまとめるために祇園祭の山鉾巡行を再開する計画が立ち上がりました。
色々苦難の末に天文2年に延暦寺の神事とも関係なく、幕府の後ろ盾もない状態で山鉾巡行がスタートしたのです。
クライマックスは山鉾巡行を再興したシーンです。 町衆と一度は敵味方で戦いその後和解した馬借軍団や河原者たちと共同で、身分を超えて山鉾巡行を成し遂げたシーンは圧巻でした。
このスートリに、主人公の町衆の若手世話役と身分の劣る(河原者)の美女との恋愛を絡めて話が進んでいきます。
[感想]
クライマックスでは思わず涙を流してしまうほどで、小説としてはとても面白く仕上がっています。また、当時の京都の街中の様子が具体的に手に取るようにわかる描写も見事です。
ストーリが 町衆 vs 幕府 という構図で描かれておりこれが判官贔屓の日本人の心を掴み、この本を原作とした映画「祇園祭」もヒットして、山鉾巡行は町衆が独立して再興したという説が一時期有力となりました。
その後、歴史学者の研究により、山鉾巡行はむしろ幕府の方が積極的に動いていたことなどがわかり、それ以降は町衆が幕府に対抗して山鉾巡行を再興したという説はトーンダウンしました。
そういう意味ではフィクションはフィクションですが、前述のように当時の暮らしとか河原者や馬借とかとの関係などはとてもわかりやすく描かれておりそれだけでも読む価値はあると思います(もちろん脚色はしてあると思いますが)
また、幕府も再興に力を入れたにせよ、時代背景としては、土一揆の原因だった農民への厳しい年貢の取り立てや幕府の腐敗に対して町民側が反感を持っていたことは確かだと思いますし、幕府が力を入れたと言っても物資を準備したりお金を用意したり人を集めたりするのは町衆がやっていたわけですから、町衆が「これは自分たちでやっているんだ」と考えたとしてもおかしくはないのではないかと思います。
古い本で新刊ではもう読めませんが古本屋にはまだ一定量が出回っているようです。私はamazonに出店しているショップで買いました。
なお、映画の「祇園祭」は現代ではTVなどでは再放映されることはないですが、現在は京都市が権利を持っているとのこと。年に一度、祇園祭の時期に京都文化博物館で上映されるとのことです。 ヒロインに岩下志麻、馬借親分に三船敏郎など錚々たる俳優が出演しており、一度は見てみたいと思います。
映画についてはwikiがありました。
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