鉾の天王人形について
祇園祭の鉾に「天王さん」と親みを込めて呼ばれている各鉾の守護神の人形があり、それを天王人形と言いあまり目立ちませんが鉾の構成要素として重要な役割を担っています。
天王人形とは
鉾には屋根の上に全長20m前後の真木(しんぎ)が乗っていますが、その一番てっぺんから5mぐらい下のところに「天王人形(てんのうにんぎょう)が飾られ(祀られ)ています。
全長10-30cmの小さな人形のため実際の鉾を見ても肉眼では見落としてしまいそうな感じですね。初めて鉾を見る人はおそらく全く気づかないのではないかと思います。
天王人形は、祇園祭り期間中以外はそれぞれの鉾町の蔵の中で秘匿されていて、祇園祭中だけ外の世界に出てきます。
まず、鉾立ての時に蔵から出してきて真木に取り付けられた天王座と呼ばれる台に納めますが、納める時にも布で覆い隠してなるべく人目に触れないようにするそうです。 あくまでこっそりと存在させるというのが重要なポイントです。
守護神の人形を中心に据える「山」とは正反対ですね。
各鉾の天王人形
それでは、各鉾の天王人形はどんな人形なのでしょうか。
長刀鉾 和泉小次郎親衡像
長刀鉾は長刀鉾の大長刀を愛用したとされる武将である和泉小次郎親衡の人形です。
詳しくはこちらで解説しています。

函谷鉾 孟嘗君(もうしょうくん)像
函谷鉾の天王人形は、函谷鉾の由来である中国の史話の主人公である斉(せい)の宰相だった孟嘗君像です。
菊水鉾 彭祖像
中国の紀元前4-3世紀戦国時代の道教の仙人である彭祖(ほうそ)が天王人形になっています。彭祖は300年生きたとも、800年生きたとも146年生きたとも言われていますが、どうも当時と現代とは年月の長さが違うということで、
当時の800年=現代の146年 という説もあるようです。
長生きの秘訣を残した人物でもあり、3つの養生術があり、
一つ目は現在の「気功」
二つ目は食事
三つ目は房中術
で、食事 <気功<房中術の順番で長寿に良いとされています。
気になる房中術ですが、これはセックスのことで、「人間をもって人間を治す」という彭祖の教えの根幹部分なんだそうです。ちょっと気になりますね。
ここら辺はあまり菊水鉾とは関係ありませんので先へ進めさせていただきますw
月鉾 月流命(つくよみのみこと)の木彫りの像
伊弉諾尊(いざなきのみこと)がイザナミに追われて黄泉の国から逃げ帰ってきて、禊祓い(みそぎはらい)をした時,右眼を洗って右目から生まれた神様が月読尊(つくよみのみこと)です。
そのとき、鼻を洗って生まれたのが素戔鳴尊(すさのおのみこと)で左眼を洗って生まれたのが天照大神(あまてらすおおかみ)です。
==表記が表題の月流命(つくよみのみこと)と月読尊(つくよみのみこと)の二種類が文献上にあります==
陰陽で言えば 陰の神様です。
その月読尊を祀った人形です。 大きさは20cmほどです。
鶏鉾 住吉明神
海の神である住吉明神の像です。1793年(寛政5年)に作られました。 身長は30cmほど。
放下鉾 放下僧の像
放下とは、禅の言葉で執着や煩悩を一切捨てることをいう。放下僧は街道で歌や曲芸を演じた僧侶です。
木彫りの人形で身長は14cmと小ぶり。享保の時代の作と言われていますが作者は不明です。
町内では、東岸居士(とうがんこじ)であるとも言われています。
放下僧は屋外にあるものという解釈から、他の鉾にはある天王だいの屋根はありません。
その他の鉾
四条傘鉾、綾傘鉾、船鉾、大船鉾には天王人形はありません。
如何でしたか? 真木にちょこんと乗っかっている小さな人形で、下から肉眼で見ても気をつけて見ないと見過ごしてしまいそうな天王人形ですが、色々と歴史や言い伝えがあり面白いですね。
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