長刀鉾
祇園祭の主役の一つである山鉾は2018年現在、前祭りが23基、後祭りが10基の合計33基ありますが、そのうち前祭りの山鉾巡行で先頭を行く「長刀鉾(なぎなたぼこ)」をご紹介いたします。
長刀鉾の見所
鉾頭に大長刀を据え付けていることから長刀鉾と呼ばれています。山鉾巡行に際しては生稚児(いきちご=人形ではない生きた稚児) が乗る唯一の鉾で、その生稚児によって結界が切られて巡行がスタートする(注連縄切り)という重要な役割を担っています。また「くじ取らず」と言う特別扱いの鉾の一つで巡行の順番は常に一番目となっています。
応仁の乱以前から存在する古い鉾で、歴史・格式・意識のすべてにおいて祇園祭を代表する鉾として有名です。
「祇園祭の顔」のような存在ですから山鉾見物をするなら必ず見ておきたい鉾の一つですね。
長刀鉾の場所・アクセス方法
[住所]
下京区四条通東洞院西入ル長刀鉾町
大きな地図を表示阪急烏丸駅および市営地下鉄四条駅の20番出口を出てすぐの四条通りの東行き車線に建てられます。
[アクセス方法]
JR京都駅からは地下鉄で国際会館行きに乗り2つ目の四条駅で降ります。
大阪方面からは、JRの新快速に乗ってきても速いですが、阪急の梅田から特急で烏丸駅まで43分です。
阪急の烏丸駅と地下鉄四条駅は地上出口が同じで、20番出口が一番近い出口です。
ただし毎年宵々山から宵山にかけて出口規制が行われ時間帯によって出口専用になったり入口専用になったりしますのでご来場前に阪急電鉄のウェブサイトの「沿線お出かけ情報」を確認されることをお勧めします。
長刀鉾の日程
他の山鉾は鉾立てから始まりますが長刀鉾は生稚児がいる関係でイベントがいくつかあります。
[長刀鉾町お千度]
日時: 7月1日 午前10時〜
場所: 八坂神社内(東山区祇園町北側625)
・その年の選ばれた長刀鉾町の稚児と禿(かむろ)と町役員らが八坂神社の本殿を巡って神前に奉告と祭りの無事を祈ります。
[長刀鉾町稚児舞披露]
日時:7月5日 15時30分〜
場所:長刀鉾町会所(下京区四条通烏丸東入る)
・7月5日は長刀鉾町の吉符入りの日です。会所に集まった関係者に稚児が正式に紹介されます。その時に、稚児が稚児舞(太平の舞)を披露して事前チェックを受けます。そしてその後、会所の2階から四条通に向かって窓から身を乗り出して一般の人たちにも披露します。
[鉾立て]
日時:7月10日 午前7時〜
場所:下京区四条通東洞院西入ル長刀鉾町(四条通り東行き車線内)
鉾は縄だけで重さ10tonを越える構造物を作る伝統的な工法を使って、だいたい大きな鉾で3日ぐらいかけて組み立てていきます。10日の朝から組み立てがスタートします。最初は枠組みだけ地面においてあるだけですがだんだんと形になっていきます、特に全長20mを超える真木が取り付けられる作業は見応えがあります、すべて人力で釘を一本も使わずにあの大きな構造物を作ってしまうのですから凄いことだと毎度感心してしまいます。高いスキルが要求され、また危険も伴う作業をずっと絶やさずに続けている京都の鉾町の方々の情熱は本当に素晴らしいと思います。
[長刀鉾幣切り]
日時:7月10日 午前10時〜
場所:長刀鉾町会所(下京区四条通烏丸東入る)
鉾立てと同じ日に八坂神社の神職が長刀鉾町に出向いて神事に使う各種御幣を取り揃えます。
[曳き初め]
日時:7月12日* 日時はその年により変わります
場所:下京区四条通東洞院西入ル長刀鉾町(四条通り東行き車線内)
鉾が完成した後、懸装品が飾られお囃子も入って、もちろん稚児も禿(かむろ=稚児の補佐役の子供)も正装して搭乗し本番と同じ状態で「試運転」を行います。音頭取りの「エンヤラヤー」の掛け声で鉾が動きます。500mほど前進してまた戻ってきます。本番の巡行では一般人は鉾を触ることもできませんがこの試運転では一般人が鉾を曳くことができます。 そのため毎年どの鉾の曳き初めにもたくさんの人が集まります、特に長刀鉾は人気があり曳き手になれるのはラッキーな一部の人ですが、ただ見ているだけでも「動いている鉾」を間近に見れるのでワクワクドキドキしますので日程が合えば是非体験したいイベントですね。
[長刀鉾稚児社参]
日時:7月13日 11:00〜
場所:八坂神社
稚児が正装して白馬に乗ってお供を従えて八坂神社に詣でるイベントです。
禿(かむろ=稚児の補佐役)も武士の姿で同行します。
稚児に格式を与えるための参拝で、これによって稚児は十万石の大名と同じ格式となるとのことで「お位もらい」とも言います。
[宵々山〜宵山]
日時:7月13日〜16日 (だいたい9時頃から20時頃まで)
場所:下京区四条通東洞院西入ル長刀鉾町(四条通り東行き車線内)
曳き初めが終わると鉾には駒形提灯が据え付けられ、13日9時からは粽(ちまき)や団扇や扇子などの物販も行われ一般の搭乗も可能となります。お囃子も行われてお祭り気分が一気に上がっていきます。
そして宵々山15日と宵山16日は夕方から四条通りと烏丸通りなど鉾が立っている通りが歩行者天国になります。
他の鉾と同様に長刀鉾も一般の人が鉾に登ることができます(ただし女性はシキタリにより鉾の中には入れません)。長刀鉾の売店で手ぬぐいや粽などを買った人は町会所の2階に登ることができてそのまま鉾の中に入っていけます。とにかく混んでいますので立ち止まることは出来ずあっという間に終わってしまいますが、お囃子演奏中であれば、お囃子のど真ん中でお囃子が聞けますのでなかなかの体験ができます。
ちなみに、女性が入れないのはこの長刀鉾と放下鉾の二つで、他の鉾や曳山は女性でも入れます。(北観音山も女人禁制ですがそもそも一般人は山の中に入れません)
女人禁制については、血の穢れからくる信仰上の約束事で第二次世界対戦終戦までは祇園祭でも厳しく守られていましたが、終戦後進駐軍の将校などが恋人や婦人を連れて鉾へ勝手に登ってしまい、日本人はそれを阻止できる立場でもなくアレヨアレヨと見守っているうちにご婦人へのタブーがなくなってしまったという説があります。
[巡行]
日時:7月17日 9:00スタート
場所:スタート地点下京区四条通東洞院西入ル長刀鉾町(四条通り東行き車線内)
長刀鉾は前祭巡行の先頭の鉾ですので朝9時にスタートします。 スタートしてすぐ(9:10)に麩屋町まで来るとまず稚児が稚児舞(太平の舞)を披露して疫病退散を願い、その後「注連縄切り」が行われます。注連縄切りは神域との結界を切って開放するという意味があるそうです。

注連縄切りを終え四条通りを進む長刀鉾
その後、町名が変わる毎に稚児舞を行いながらゆっくりと進んでいきます。 ルートは、四条通りを東に進み、河原町通で(9:40)有名な辻回しをして左折して河原町通りを北に進みます。 御池通りで(10:20)二回目の辻回しを行い左折して御池通りを西に進み、烏丸通りを超えて新町通りの地点が終点(11:30)となります。
そして、終点のこの地点でお役御免となった稚児が鉾から降りてきます。急な傾斜のハシゴを使って従者が稚児を肩車して慎重に降りてきます。その後稚児は1BOXカーに乗せられて何処へ。

2017年の巡行の最終地点の新町御池の交差点手前で停車し従者に抱えられて鉾から降りる稚児
一応これで本番のイベントは終了ですが、実はここからまだ先があります。戻り鉾と言ってこの地点から長刀鉾町まで帰っていく工程があるのです。 新町通りに向けて3回目の辻回しをした後、狭い新町通りを四条通りまで南下していきます。もちろんこの時もお囃子は絶え間なく演奏され音頭取りの掛け声も一緒で真剣そのものです。しかも、新町通は狭いので迫力満点!! 電信柱や電線にぶつかりそうになりながら狭い道をすり抜けていくのを見ていると本当にドキドキします。 そして四条通りで最後の辻回しを行って帰還します。

2018年の戻り鉾-長刀鉾。狭い新町通りを慎重に進みます。(三条新町交差点付近)
長刀鉾の御神体
[御神体] 和泉小次郎親衡(いずみこじろうちかひら)像
長刀鉾の大長刀にゆかりのある人物和泉小次郎親衡(いずみこじろうちかひら)が守護神となっています。
[ご利益] 疫病退散・厄除け
長刀鉾の大長刀は三条小鍛冶宗近が娘の病気の回復を願って作り八坂神社(当時の祇園感神院)に奉じたもので、その後その大長刀は数々の伝説を生み、最終的に長刀鉾町に保管され鉾頭に取り付けて長刀鉾が誕生しました。そういう経緯からご利益は疫病退散・厄除けとなっています。
長刀鉾の歴史
祇園祭は9世紀(貞観10年 869年)が始まりとされていますが、まだその頃には山鉾はなく、11世紀ぐらい山鉾の原型が出てきてそれ以降徐々に進化してきました。長刀鉾は応仁の乱以前から固有名詞としての記録があり最も古い鉾の一つとされています。
サイズと重量 重さ11.1Ton 高さ25m
2008年の巡行時に全ての山鉾の重量を計ったことがあり、長刀鉾は11.1tonでした。
これは全山鉾の中で3番目です。ちなみに一番は月鉾で11.88Ton,2番は函谷鉾で11.39Tonでした。
高さはなんと25m!! ビルの7-8階と同じ高さです。
構造物
長刀鉾を構成する構造物と飾り物についてご紹介します。
全長20mの真木
長刀鉾の真木(しんぎ)は昭和61年に復元新調され現在にいたっています。
鉾頭 大長刀
元は三条小鍛冶宗近が作った大長刀が乗っていましたが、1521年(大永2年ょに三条長吉作の長刀に交換、さらに1674年延宝2年には和泉守来金道作に交換、天保8年からは竹製の模造長刀
天王人形 和泉小次郎親衡(いずみこじろうちかひら)像
鉾には真木に小さな御神体が祀ってありそれを天王人形と言います。 長刀鉾の天王人形は和泉小次郎親衡(いずみこじろうちかひら)像です。
和泉小次郎親衡(いずみこじろうちかひら)像についてはこちらの記事もご覧ください。

大屋根 きらびやかな彫刻や飾り金具を配した美術品!
1828年(文政3年)製作のもの。切妻作りで赤の漆塗り、軒の両端には大鯱(しゃち)が据えられています。
石持(いしもち) 頑丈な鉾の土台
桜の木で出来ていて 45cm x 22cm x 6.42m。文政13年調達のもの。
車輪は厚さ18cm直径1.92mです。
懸想品(けそうひん)
懸想品は山鉾の周囲を囲み構造物を隠す役割で、各山鉾が競って豪華絢爛なものを調達してきています。
前懸(まえがけ)
元来は東ペルシャ産の段通ですが、代用品として植村松風下絵の花模様綴織を採用しています。
胴懸(どうがけ)
中国製の段通を2枚使っています。

鉾の本体横にかかっている二枚の織物が鉾の本体横にかかっている二枚の織物が胴懸けです。です。
見送り
天保8年製作のもの。
長刀鉾の会所
鉾の目の前のビルの一階と2階が会所です。鉾の売店で何かを買うと中に入ることが出来ます。
中はエアコンが効いていて涼しく、真夏の猛暑の中を歩き回っているときに入ると生き返った気がします。
一階には、今は懸想品として使用していない古い懸想品などが展示されています。
二階からは鉾のとの間を行き来できる通路が作られていて鉾の中にも入ることが出来ます。
(女性は鉾には入れませんのでご注意を!)
物販
長刀鉾では鉾の隣にグッズを販売する売店が13日〜16日に開店します。 ここでグッズを買うと会所に入場することが出来、男性はさらに鉾の中に入ることが出来ます。 一人につき一つのグッズが必要ですのでお気をつけください。
売上金は鉾の運営費用として使われます。
(値段は変わる可能性があります)
粽(ちまき)
祇園祭の粽は一部を除き食べられません。長刀鉾の粽ももちろん食べるためのものではありません。
粽には護符がついていてお守りとして玄関の上などに飾っておきます。
長刀鉾の粽は、厄除け・疫病退散のご利益があり人気があります。
そして翌年の祇園祭のときに八坂神社へお返ししますが、各鉾でも受け取ってもらえます。
価格: 1,000円
人気ゆえに夕方頃には売り切れてしまうことが多いですので手に入れたい方は午前中に買っておくことをお勧めします。
粽の由来などにつきましてはこちらの記事もどうぞ。

その他 ・手ぬぐい 500円 ・タペストリー 2,000円 ・和紙便箋 1,000円 ・のれん 2,000円 ・巾着 2,000円 ・ミニ鉾 3,000円 など 鉾への搭乗は女性NG
グッズを買えば会所に入ることが出来、会所2階から鉾の中に入ることが出来ます。 ただ長刀鉾は厳しい戒律を守って降り女性は中に入ることが出来ません。 すぐそばまでは行けますのでギリギリまで寄って雰囲気を楽しみましょう。
長刀鉾のお囃子
どの鉾のお囃子も笛、太鼓、鉦(かね)で構成されています。
長刀鉾のお囃子は、長刀鉾祇園囃子保存会のメンバーが演奏しています。
メンバーは太鼓方、笛方、鉦方の3グループに分かれていて10才頃から参加して技術を伝承しているとのことです。
曲は、大きく2種類あります。
・奉納囃子=巡行当日に八坂神社に向かって進んでいる時のお囃子
・戻り囃子=河原町どうりの辻回し以降に演奏するお囃子
曲数は全部で30曲もあるそうです。
長刀鉾のお役立ち情報
[公式Website]
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